さよならの十秒前
「そのあとはもう、行かなかった…お見舞いに」

涙を乱暴に拭って、紗枝は真っ直ぐに私を見た。

「ねぇ、島井」

「…うん?」

「人が死ぬって、怖いね」

私の思ったことと、同じだ。

紗枝はちょっと微笑んだ。

「今までさ、人が死ぬって結構きれいなことだと思ってたんだ」

そう言う紗枝の瞳は、すごく悲しそうだった。

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