さよならの十秒前
坂井奈緒は見たかったのだ。

修介の明日を。

私たちに、当たり前のように来る『明日』を−…。


修介は、ふらふらと立ち去った。

私は止めなかった。

もう一つ、大事な意味が、彼女のメールには込められていて。

それを私の口から伝えることは、ためらわれた。

きっと、その意味には、修介が気付かなければいけないのだ。

彼自身の力で。彼女のために。

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