さよならの十秒前
先生は、愛おしそうに、手元のスノードロップを見つめた。

「坂井がな、教えてくれたんだ。この花の、花言葉」

「…何て言うんですか?」

「…逆境のなかの、希望」

希望。

それはきっと、病と闘い続けた坂井奈緒のなかに、在り続けたもの。

そしてこれから生きていく、修介に送られたもの。

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