さよならの十秒前
その帰り道。

とぼとぼと家に向かいながら、私は西野の言葉を思い返していた。

興味本位で、坂井奈緒のことに首を突っ込もうとした私を、責めているように聞こえた。

そして。

それ以上に西野は、自分を責めているように思えた。

あの日、彼は坂井奈緒に償おうと、彼女の家に向かった。

でも、できなかった。

西野は、忘れそうだ、と言っていた。

彼女への後悔を。

自分への後悔を。

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