この世で一番大切なもの
求人誌を読みあさり、何個か目星をつけて面接に行く。

だがどこも不景気で俺のような人間を雇ってはくれるはずがなかった。

俺の履歴書は、学歴は高校中退でその後の四年間は書けるわけがない。

刑務所の工場にいたなど書けない。

嘘も書けたが、どうせばれるだろうと思い何も書かなかった。

面接に行くと必ずといっていいほど、

「高校を辞めてからは何をしていたの?」

と聞かれた。

俺は適当にいつもごまかして何とか返事をしていたが、やはり怪しまれていたと思う。

俺の本名をインターネットで検索すれば分かることだ。

今時よっぽど鈍感な職場でなければ、面接にきた人間の本名をとりあえず検索するのは当たり前だ。

「後日連絡いたします」

そう言われ、どこも数日後には、

「すいませんが、また今度の機会に・・・」

という遠まわしに不合格を伝える電話がかかってくる。

俺はそのたびにひどく落ち込んだが、納得せざるをえなかった。

それは、俺がもし経営者だとしたらと考えると、絶対に自分のような人間は雇わないからだ。

人殺しを好き好んで雇う経営者がどこにいるのだろう。

そう考えていつも自分を納得させていた。

だが納得しているばかりではいられない。

とにかく仕事をして自分で食っていかなければならない。

俺は仕事が見つからず途方にくれていた。

そして気づけば何かを求めて歌舞伎町をフラフラしていた。







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