臆病なサイモン
「…うん」
泣きそうな声が、聞こえた。
閉じたまんまの真っ暗な視界に、ダンゴの小さな手が、俺の手に弱々しく触れる。
包まれた瞬間、その暖かさにまた溶けて、止まらなくなった。
「…うん、わかった」
曲げた膝に顔を埋めて、無様に嗚咽を上げる俺を、ダンゴは責めたりしない。
責めるわけがない。
ハナからわかってて、それでも祈るような気持ちで、吐き出した想いは。
ちっぽけな俺の、ちっぽけな、エゴだ。
「…どうして、産まれてきたんだろ、」
こんなちっぽけな子供の髪の色ごときが、「あの人」を長い間、責め立てていた。
それなのに、傷付けられてきたのは自分だけだなんて、独りよがりな痛みに喚いてばかりで。
生きているだけで、罪のない「あの人」に毒を撒き散らす有害な自分に、目を瞑ったり、して。
―――どうして。
「サイモン」
握られたまんまの、脱力した俺の手がより一層、熱くなる。
「サイモン、」
まるでふたりして、泣いているみたいだ。
「サイモン…」
静かに呼ばれるその名前にすら、顔も上げられないくせに。