臆病なサイモン









「…サイモン、ごめん」


謝るのは俺のほうなのに、何故かダンゴの口からそう飛び出してきた。



「話してくれて、ありがと」

細い眼が、強みを増して俺を見てた。

そこで初めて、気付いたんだ。

いつもいつも、無表情だとばかり思ってたけど、そうじゃない。

ダンゴのそれは、無表情とか無愛想とかじゃなくて、「真摯」なカオ、だったんだ。

毎日、毎日、ダンゴはずっと、真摯に、真っ直ぐに、俺を受け止めてくれてた。



「ありがとう」


笑わない。

泣かない。

怒らない。


ただ真摯に、情けない「俺」に礼なんかを言う。



(…そんなじゃ、ないっつの)

そんな優しく返されるような気持ちで、吐き出したんじゃないんだ。

ダンゴの「秘密」を聞き出そうとして、ネタ振りしておきながら、自分で嵌まったワナ。

情けなくて弱虫で、サイテーなんだ。

言うに事欠いて、「父親」のことだなんて、どうかしてる。


どうかしてるのに。



『君なら、大丈夫』



それが嬉しくて、無条件に認められたようで、なにもかも抜きで、細胞が湧いた。


嬉しかった、俺。


嬉しかったんだ、ダンゴ。





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