臆病なサイモン
駆け引きなんて、もうこの際、無用なアクセサリーとなんら変わらなかった。
いつもの、互いを探り合うような目配せなんか、要らない。
「真摯」に、受け止めるだけ。
暗闇を照らす星空に濡れながら、願い事を祈るように口にする。
「…わたしの、」
透明な眼が交わった時、ダンゴが纏っていた白いシーツをゆっくりと引き寄せた。
騒ぎで揉まれたダンゴ頭の乱れが、俺の胸を妙に掻き混ぜて意味もなく謝りたくなる。
ごめん、ダンゴ。
なんか、不純だ、俺。
「…私の願い事はね」
それでもダンゴは続けた。
掠れた声は、思いの外はっきりとしてる。
実ははじめから、話してくれるつもりだったのかもしれない。
それくらいダンゴはしっかり背筋を伸ばして、ヒーローの威厳を捨てなかった。
沈黙を破っていた小さな唇が、宝物を見せるように、浅く、開く。
星が瞬くより静かに、それは夏の夜空に落ちた。
「…また、会いたいな」
誰に、なんて、訊かなかった。
―――訊けるわけ、ない。
祈るような、欲するような。
それは彼女の、最大の、ないものねだり。