臆病なサイモン
いやしかし、そんなことに圧倒されているわけにはいかない。
折角の会話のタネを無駄にして堪るか、と、この時点で俺はもう必死。
もう、「どうして逃げたの」とか言われたって怖くない、きっと。
それにこれは、素直に疑問だったからだ。
(…俺は、クラブのお陰で鍵スペアを持ってるってことで解決するけど)
ダンゴさん(このへん以下略)は転入してきたばかりだ。しかも昨日。
屋上は、教師だって滅多に訪れない場所で、鍵が偶然開いてました、なんてことは絶対にない。
(あ、俺が鍵をかけ忘れなきゃ、だけど)
俺の質問に、ダンゴさんは白眼を充血させたまま、一瞬だけ、顔をしかめた。
「……たまたま拾った。職員室で、鍵」
―――えっ、おやしい。
とか、思っちゃうよね。ふつうにね。
(いやいやいや、職員室で拾うってなに。転がってないよ、転がってないだろフツー!?)
な、なんて言えばいいんだ、なぁブラザー。
ここはどんなセリフがしっくりクる!?
俺は悩んだ。
やっぱそこから宇宙無限に会話を広げられるような一言!?
そんなビッグマウス世界の北野じゃないと無理だろ!?
俺は更に迷った。
迷って、迷って、迷って。
「ら、ラッキー……」
迷った末、まさかの神が舞い降りてきた。
「…頭弱そうなヒヨコアタマは、本物だね」
神は、死んだ。