臆病なサイモン








「…あついね」


隣に座るバカひとり、ダンゴが呟く。


あちいね、なんてそれに返しながら。



(……あ)

いつもの後れ毛を伝って、汗の玉がツ、と首を流れるのが見えた。

草むらに座り込むダンゴは小さく体育座りしてて、映画館で見せた「涙」の名残りなんかもう、微塵も見せやしない。

肩の力は抜けてるし、チャリンコに乗ってる間に乱れた髪はさやさや風に乗ってるし、なんか、ほんとナチュラル。

学校の屋上じゃ、毎日こんなんなのに。



(…なんか、知らないオンナノコと一緒居る気分だ)

とくとく。

リズム叩く心臓は、汗で束になったキンパツなんか気にしない。


風が、優しい。


見上げた先には、でかい入道雲と、目を刺すようなサマーブルースカイ。





「きゃははっ」


架線の向こう側では、小学生くらいの子供ふたりと父親らしき男性が、河で水遊びしてる。

パシャパシャ、水面を叩く音が心地いい。



「ぱぱー」

こどもの無邪気なそれは、とても羨ましかったけれど。


すごくイイ、「時間」だ。







< 207 / 273 >

この作品をシェア

pagetop