臆病なサイモン
* * *
「…あち、」
ぱたり、と汗が滴って、気に入りのロックティーシャツに濃いシミを作る。
高架線独特の影は草の形に切り取られていて、さやさやと靡く風からは土の匂いがした。
空は高く青く、強烈な太陽は、俺達の若い眼球を刺激する。
―――チャリンコで女の子とニケツ。
それを今まで夢見るほどドリーマーな十五歳じゃなかったけど、腰辺りをぎゅと握る暖かな手は、なんかちょっとイイかも。
なんて。
ハイ、思春期症候群。
まあ、そんなカンジで、妙に機嫌がいいダンゴを後ろに乗せながら、学校近くの土手に到着したのが数分前。
道中は果てしなく暑苦しくて熱射病なりかけたけど、着いてみればそこは……やっぱ果てしなく暑かった。
河を挟んで草が繁るのは土手だけど、その土手の上は結局アスファルトの道。
ジリジリ上昇する夏の熱気は、河の涼と対立しているかのように殺人的だ。
でも、その暑さが妙に「夏休み」ぽくて、なかなか影に入れないでいる、バカふたり。