臆病なサイモン
「サイモンは泣き虫だなぁ」
はらはらと流れる涙を塞き止めるように両手で瞼を撫でられて、ゆっくりと視線を上げた。
涙が浄化した鮮やかな視界は、まるで生まれ変わっちゃったみたいにきれいで。
そこに映る青空と、はにかむダンゴが、息を飲むほど綺麗だった。
「…ごめん」
情けなくて、嬉しくて、とにかく謝りたくて、喜びを伝えたくて、必死にその瞳と見つめ合う。
…なんて、そんなロマンチックな関係じゃないけど。
「泣いちゃえ」
だけどその言葉が優しくて、また涙が流れちまったのには、ほんと参った。
ダンゴは、俺が泣き止むまでずっと撫でてくれていた。
俺は撫でられる度に目尻が熱を持つのを必死で隠そうとして、でも、隠しきれなくて、照れた。
高架線下で遊んでる親子が、こっちの騒ぎをちまちま気にする気配がする。
パシャパシャと河の水が弾ける音。
パタパタと俺のデニムに涙が叩きつけられる音。
さやさやと草花が風に吹かれて抱き合う音。
ダンゴの小さな掌からトクトクと伝わる、穏やかな心臓の音。