臆病なサイモン
『…君ならできるよ、サイモン』
今なら、できる。
だって俺は、今までもこれからも、ずっと、この人の「息子」なんだ。
「…今まで、ごめん」
ずっと、酷いことばかりしてきて。
真っ直ぐ向かい合うこともしないで、逃げてばかりで。
目が痛いだろうキンパツに墨なんかぶっかけて、貴方の心を痛め付けてしまって―――。
それなのに、こんな俺に、そこまでしてくれるなんて。
「俺、オヤジの子で、良かった……」
キンパツでも血は繋がっていなくても、貴方の子に、産まれて。
―――本当に、良かった。
「…っ、」
だらだら涙も鼻水もいっしょくたにして、情けない極地だけど。
しっかり前を向いたら、オヤジも同じ顔、してたから。
鏡に映したようにそっくりで、笑える。
(…俺って、オヤジに似てるんだ)
そんなわけないのに。
似てた、おれら。
「……ありがとう、オヤジ」
―――その瞬間、瞬いた星が流れたのを、俺はオヤジに抱き締められながら、見た気がした。