臆病なサイモン
「サイモーン!」
サラーと風のように去っていったダンゴに首を傾げてたら、バックドロップ食らわされた。
「うぉっ」
どキンパツの俺を見つけて、ダチンコが何人か集まってくる。
バックドロップはその中の一人から。
それを見計らっていたかのようなダンゴの行動に、思わず目を丸くした。
(……もしかして)
気を遣ってくれたんだろうか。
ただでさえ目立つキンパツの俺、プラス、転入してきたばっかの自分だったら、目立ちに目立つだろうから。
しかも男女って性別が、万年そういうネタにうきうきしてるやつらを騒がせそうだ。
俺が、あんま目立つの好きじゃないって気付いてたのか、奴は、なぁブラザー。
あ、自分が目立ちたくないってのもあるか。
どっちにしろ、ダンゴの機転にサンキューサンキューてなる俺はゲンキンだ。
さっきまで少なくとも、ダンゴとの会話を楽しんでた癖に。
ダンゴとふたりで居るのは、「屋上」だけでいいな、なんて。
変なウワサ流れたらもっと困るし、なんて。
俺、最低。
調子イイ性格とこのキンパツが目立つせいで、何人かの女子とウワサになったりしたけど、なんかその度に女子のほうが盛り上がっちゃって勘違いしちゃって、コクられて、あーもう友達でられないじゃん、て。
今まで友達として絡んでた女の子に真面目な顔して好き、なんて言われるとさ……すげぇ、荷が重くなるじゃん。
これまで一緒に無邪気に笑いあってきた時間の中で、彼女はそういったピンクの感情を抱いて俺を見てたんだな、って思うと、途端になんか胸が重くなる。不快感って言ってもいい。それとも不純?
よくわかんないけど、そうなることが、結構あって。
で、断ってさ、これからも友達でいてね、って言ってくれたから、がんばってがんばってがんばって、今までと変わらないように接してると。
『私の気持ち、知ってるくせに!』
て、泣かれたり……が一度あったわけさ。
なにそれ俺にどうしろっつの。
だからダンゴとも、「屋上」だけの関係でいいじゃん、みたいな。
あ、なんか。
ジコケンオ、突入。
してたら。
気付いた時には放課後だった。
「なにそれ、ナニ自慢?」
屋上に行ったらなんとなくそれが話題になって、これってやっぱ俺が悪い?
って話し終えた時。
ダンゴはクールにそう返してきた。
「…いや、ナニ自慢とか、なんかやらしいね」
俺がなけなしの百五十円で買ってきたパピコ半分をちゅーちゅーしながら、ダンゴは脚を伸ばして狭い影に座り込んでいる。ガリガリくんは売り切れてた。
「それは君のアタマがいやらしいからだよ」
チューチュー。
早々と少なくなっていくパピコに涼を誘われつつ、ダンゴの隣で同じように脚を伸ばす。