さうす・りばてぃー
「悪いけど、その子、俺の妹なんだ。これからその子と買い物に行く予定なんだけど、連れてっていいかな?」

 まさしく、口からでたらめだった。我ながらよくそんな適当なことが言えるものだと思う。

 少年たちはちょっと顔を見合わせて、それから「はーい」と生返事をすると、そのまま去っていった。

 うんうん、素直な少年たちだ。もともと悪気はなかったに違いない。ちょっとナンパに慣れていなかっただけのことだろう。

 だいたい、二人で一人を誘うのがそもそも間違っている。俺はそう講釈してやろうかと思ったが、やめにした。

 あとには、俺と、その女の子が残された。

「えと……」

 まだ状況がよくつかめていない様子の女の子。ぼんやりと、こちらを見ている。

「ああ、悪い悪い。あんまり困ってるように見えたからさ。迷惑だったかな?」

 女の子はその言葉で、ようやく現状を理解したらしい。慌てて頭を下げてくる。

「そ、その、ありがとうございましたっ!」

 ぺこり、とお辞儀をする。改めて見ると、身長はまだ145センチくらい。典型的な童顔で、目はパッチリとしてほっぺたがぷにぷにしている。髪は外っぱねのショート。

 小学生としてはなかなかかわいい。さっきの中学生らしき少年がナンパしてたのも、わからないでもない。あと数年もすれば、きれいな女性になるかもしれない。

「じゃあ、俺はこれで。またさっきの奴らに捕まらないように気をつけてね」

「あ、あの、お名前を……」

「なに、頼りになるお兄ちゃんとでも覚えといてもらおう」

 俺は笑いながら言う。自分で言ってても恥ずかしいセリフで、誰かに聞かれたらアホだと思われるだろう。

 もしこの子が自分と同じくらいの年齢であれば、当然名前と電話番号を教えて恩を売っておくところだが、とりあえず小学生に興味がない俺としては、名前を教えてもあまり意味がない。

 きれいなお姉さんがいて出会いにつながるという展開も考えられなくはないが、世の中そんなに甘くはないだろう。

 俺は、手を振って、その場をあとにした。
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