君に許しのキスを
ああ、そうだ。

小学生の時の、劇団の先生だ。


とても厳しかったけど、良くできたときや、励ましてくれるとき、こうして優しく、頭を撫でてくれた。



あたしはそれが大好きで、レッスンは大変だったけど、一生懸命、頑張れたんだ。



だけど、どうしてあたし、
演劇、やめたんだっけ?


そんなことを考えていると、頭を撫でる手がゆっくりと動きを止めた。



身体の向きを、そっと変えてみる。
その手の方に。



その手の持ち主は、ベッドに顔を埋めて、眠りに落ちていた。



ベッドから上体を起こし、その手の持ち主を上から眺めてみた。
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