君に許しのキスを

―side凜

「タコって生きてるのを近くで見ると、気持ち悪いよな。」


小さな水槽の中を優雅に泳ぐタコの姿を
かぶりつくように見ながら、あの人が言った。


「自分が見たい、って
言ったんじゃないですか。」

あたしは少し離れて、
隣の水槽を見渡しながら言った。


「まあそうだけど。
世のため人のため、
ってところもある訳ですよ。」

水槽に目をやったまま、彼は答える。
世のため人のため。
つまりは、
妃奈ちゃんと先生のことを言っているんだろう。


「沓宮さんだって、
そのためについて来たんでしょ。」

彼は不意に振り向いて、
あたしの方を見つめる。
< 201 / 301 >

この作品をシェア

pagetop