君に許しのキスを
今となっては、内容についてはほとんど覚えていない。

けれど、その時の胸の震えや感動は、
昨日のことのように覚えている。


それで、その日のうちに、
あたしも演劇がしたい、そうお母さんに言ったのだ。

そうして入った児童劇団でのレッスンは、厳しいけれど、とても楽しかった。

特に講師の水野先生が大好きで、
彼に褒められたくて頑張っていたところも大きい。

今思えば、あれがあたしの初恋だった。



そんな演劇のレッスンの中で、あたしは人間観察の楽しさを覚えた。

そのせいか、“あゆちゃん”たちのことも、
そんな子もいる、そう受け止められるようになった。

ただ、その嫌がらせをまるで気にしないようにしていると、それが逆に“あゆちゃん”の気に障ったらしい。
< 221 / 301 >

この作品をシェア

pagetop