君に許しのキスを
奴の性格を一言で言えば、『平凡』だろう。

良く言えば、『親しみやすい』。
悪く言えば、『地味』。


ハイスペックさを鼻にかけた厭味な奴でなければ、変に良い奴すぎるという訳でもなかった。


奴にとっては生まれたときからそうであったために、当然なのかもしれないが。
そんな奴だったからこそ、2年で同じクラスになってからは、一番親しかったのかもしれない。


とは言え性格こそ『凡人』だったが、やはり奴は天才だった。

かの発明王エジソンは『天才とは1%の才能と99%の努力』だと言ったという。
その『99%の努力』を苦に思わない、そういう類いの『天才』が、奴だった。


期待されるのは当然で、その期待に応えることもまた当然。
そしたそのための努力を全く苦痛に感じない。
そうして完璧な人生を歩んできたのが、奴だった。



そんな奴の初めての挫折が、あの事件の引き金だった。
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