君に許しのキスを
「これは親父のお下がりだから良いんだよ。」

海くんはそう言ってタキシードをつまみ、いたずらっぽく笑って見せる。


海くんにそう言われると、理屈はよくわからなくても、何となく言い負かされた気分になる。

4つも上、というか、海くんが4月生まれで、あたしが3月生まれだから、
実質5つ上だから、なのかな。

小さい頃から可愛がってもらってるけど、ただ遊ばれているだけのような気もする。


「つか、その服にそれは、合わないだろ。」

海くんはそう言って、あたしがバッグと一緒に抱えていたぬいぐるみを指差した。


「え、良いじゃん、可愛いでしょ?
それに、もともとはこのタコ、海くんのお母さんのだし。」
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