君に許しのキスを
「…ねえ、妃奈ちゃん大丈夫?
聞いてる?」

凜がいきなり、聞いてきた。
目線だけ置いていたメニューから顔を上げると、凜があたしの顔を心配そうに覗き込んでいた。


「え、なんで?
全然大丈夫だよ。」

ニコッ、と笑って、凜に答える。


「…そう?
なら良いけど…。」


凜は不服そうに唇を尖らせ、メニューに視線を戻した。

ごまかせてない。

そうは思うけど、あたしにはこれが精一杯だった。

どうしても背後に、あいつの視線を感じて、ドキドキと胸が大きく鳴る。


凜に気付かれないように、あいつの方に振り返る。
< 60 / 301 >

この作品をシェア

pagetop