*Lover's Re Mode*
「叶依。手を出せ」

先程迄のいやらしい笑みは消え、真面目モードのルイは、指輪を一つ摘まむと右手を差し出した。

つい反射的に右手をルイの手に重ねると、大きな手に強い力で掴まれ、引き寄せられる。

指に熱い感触と冷たい感触。

指のサイズぴったりのそれは、ルイが持っていた方の指輪。するすると右の薬指に収まっていく。

「あ…」

思わず声を溢した。

けれど、ルイは構わず掴んだ手を自分の口元に持っていき、指輪の填まった指の付け根に唇を押し当てた。

押し当てられた指の付け根から熱が広がっていく。

間もなく離されたものの、今度は私の左手を掴み上げると、手のひらにもう一つの指輪を置いた。

「分かってるな?」

半分夢心地の私に、暗示でも掛けるかの様に甘い囁きで促す。

私はふらふらとルイと同じように右手を差し出した。

何の躊躇いもなく重ねられた手を軽く掴むと、やっぱりぴったりの指輪は、右の薬指にするすると填まる。

どこか儀式の様な厳かな雰囲気は、ルイの一言で終わりを告げた。


「これで叶依は、完全に俺のモノ。」

< 67 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop