魑魅魍魎の菊
*
龍星は取りあえず家に帰る前に水か何かを買おうと思い、コンビニに立ち寄ったのだ。
「いらっしゃいませー」
と、いう定員の声を軽く聞き流そうとしたが…
(この声、何処かで…)
「合計1025円です。はい、すぐに温めますね」
その言葉と営業スマイルを見た瞬間、背筋が凍る感覚に襲われ…
口がだらしなく開くのであった。
(どうしてあの地味女がコンビニの店員してるんじゃあァァァ!!!!)
恐怖のあまり涙しそうな瞬間だった。…手に持つペットボトルすら落としそうになる。
オイオイオイオイ——…今日の占いを見忘れたのか俺?!
い、いや…確かに10位だったがラッキーアイテムの「鈴」を持ち歩いていた。…元々家の鍵についていたので良いのだが…
そんな事より、あの女に近づきたくねぇ…。ネームプレートを見てみれば「タカムラ」と書かれており、頭の中にしっかりと刻み込まれてしまった。
(た、他人の空似っつう…そういうパターンも)
小さく深呼吸をし、お茶とおにぎり二個を持って別の定員の元に並ぼうとするが…
「あっ、こちらにどうぞー」
という間延びした声が聞こえて来た。——またもや顔が強張る。
普段ならばこんなことは思わないが、穏便にやれば大丈夫…そう言い聞かせて商品を提示する。
——そしたらスムーズに、金を払い、釣り銭を貰い。商品を受け取って、何故か簡単にコンビニの外に出れたのだった。
(——何故かただならぬ予感が頭を過る)
コンビニの外に出た瞬間、女の子の悲鳴が聞こえたのだ。