魑魅魍魎の菊






龍星は取りあえず家に帰る前に水か何かを買おうと思い、コンビニに立ち寄ったのだ。



「いらっしゃいませー」


と、いう定員の声を軽く聞き流そうとしたが…


(この声、何処かで…)



「合計1025円です。はい、すぐに温めますね」


その言葉と営業スマイルを見た瞬間、背筋が凍る感覚に襲われ…

口がだらしなく開くのであった。





(どうしてあの地味女がコンビニの店員してるんじゃあァァァ!!!!)


恐怖のあまり涙しそうな瞬間だった。…手に持つペットボトルすら落としそうになる。



オイオイオイオイ——…今日の占いを見忘れたのか俺?!

い、いや…確かに10位だったがラッキーアイテムの「鈴」を持ち歩いていた。…元々家の鍵についていたので良いのだが…


そんな事より、あの女に近づきたくねぇ…。ネームプレートを見てみれば「タカムラ」と書かれており、頭の中にしっかりと刻み込まれてしまった。



(た、他人の空似っつう…そういうパターンも)



小さく深呼吸をし、お茶とおにぎり二個を持って別の定員の元に並ぼうとするが…



「あっ、こちらにどうぞー」

という間延びした声が聞こえて来た。——またもや顔が強張る。

普段ならばこんなことは思わないが、穏便にやれば大丈夫…そう言い聞かせて商品を提示する。



——そしたらスムーズに、金を払い、釣り銭を貰い。商品を受け取って、何故か簡単にコンビニの外に出れたのだった。




(——何故かただならぬ予感が頭を過る)



コンビニの外に出た瞬間、女の子の悲鳴が聞こえたのだ。


 
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