魑魅魍魎の菊



「驚いた。正影の傷…殆ど塞がっているじゃないか」

「まぁ…私が上手く妖力流し込んだので」



刺した傷は殆ど塞がっており、残る傷は切り傷だけ。



「さすが…最近噂にされている《魑魅魍魎の主》だね。天狐である千影の力を流し込んでも…立っていられるなんて」

「あ、あははっ。殆ど本能で立っていたようなもんでしたからね…真剣に死ぬかと思いましたよ」



眠っている玖珂君はとても綺麗で…


何でこんなに綺麗な人を傷つけたんだろうね私。そして、蛇の子に力を注ぎ込む。



(私には、こんな事しか出来ないの)




「ちょっ…。それ以上力を使ったら…」

「良いんです。半分だけでも良いので玖珂さんの式神でもつかってもらえたら、この子は大丈夫です」




龍星は解らなかった。この女は玖珂を殺そうとしているのか、助けようとしているのか…


目的が全くと言って良いほど解らなかったのだ。



…悪の総帥としか見えないが、どうしてだろうか別に敵じゃないかもしれないと考えている自分が居る。




(…この蛇、大分落ち着いてきたな)


どうしてだろうか、殺されそうになっていたのに蛇が静かに眠っているのを見て安心してしまった。

…静かに瞳が閉じられていて、蜷局を巻いて眠っている。




「ほらっ、そこの君も制服を脱いで。この蛇の子に体が締め付けられたんだろう?」


玖珂の親父さんにそう言われたので、俺に躊躇なく服を脱げば…

自分の裸体に、蛇に締め付けられた痕が生々しく残っていた。ゾクリと背筋を震わせながら、湿布と包帯を玖珂の親父さんに巻いてもらった。


 
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