魑魅魍魎の菊



市太郎は菊花が出て行くと同時に溜め息をつきながら後ろに倒れる。



(何なんだ——あの"妖力")

高々あんな女の子に出せる物なのか。いや……何かしら事情を隠しているのは伺える。


百鬼夜行の事件より前に彼女の存在を知っていた。——若き娘の主、その力は先代の主の力を凌駕すると噂に聞いていたが…


まさか、神から妖怪に成り下がり…それでも神と同等の天狐の力を注ぎこんで、滅されず立っていられるなんて——






——"化け物"。

そう言ったら、人権侵害になるので言わないが……本当に人間なのか?


——だが、容れ物は人間。力も人間並み。…これが妖怪並みになったとしても、容れ物が保つはずがない。

寧ろ死んでしまう。




(きっと、)



きっと、僕たちの知り得ない"悲しみ"を背負っているんだろう。

あのか弱い背中に…。あの"連中"が裏でしている事が本当なら脅しでもなんでも弱味を握ってくるはずなのに…



あの子も重大な…


いや、今はそんな事を考えないでいよう。そんな事は誰も望んでいないし、願ってもいない。











とある和室。

「……一体、何なんだよ……アイツ」


父と一緒のように仰向けなる正影は式神を使って対談の様子を見て、聞いていた。

自分がくたばっている間に何か進展があっても面白く無いからだ。


良い奴なのか、悪い奴なのか今の段階では検討がつかん。



(畜生、傷が見事に塞がってやがる…)


 
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