魑魅魍魎の菊

鈴が聞いたもの




「……もう朝か」


ふと、目が覚めて龍星は染められた金髪を掻き上げた。
カーテンの隙間から入って来る朝日が眩しくて、体に走る鈍い痛みに顔を歪める。



龍星はその痛む体を引きずりながら——学校に行く準備をするのだ。今までサボっていたが、玖珂と話をせねばならない…。



(ていうかあの重傷で来れるのか?)

仮にも刺されていたしな…。ていうか、あの"タカムラ"という女に会って"蛇の子"についても聞きたい。


…昨日、帰るときに話しかけようとしたが…あの女に聞かれるのが嫌だったから上手く切り出せなかった。



(——あの子、名前が無いんだったな…)



現在龍星の両親は海外赴任をしているため、息子の龍星は日本で一人暮らしをしているのだ。その為か一人で料理も作って、コーヒーを啜りながらテレビのニュースを見つめる。



「……畜生、あの女"だけ"は敵に回したくネェな」



玖珂の親父さんのお陰か蛇柄の痣が消え、若干体中に赤みを帯びた痣が広がっている。

龍星は丁寧に湿布を張り、包帯を巻くのだった。











ショルダーバックを肩に掛け、耳にイヤホンを入れてマンションの外に出たのだ。

目映い太陽の光は視界を奪い、マンションのエントランス前の花壇の花が揺れるのを尻目に歩き出した瞬間——









その視界の中に、"白いワンピース"が見えた。


耳に響くラモーンズの激しさが一瞬だけ、和らいだような気がしたんだよ——


 
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