魑魅魍魎の菊



Ramones(ラモーンズ)、奴らは凄ェ格好良いロックバンドだと心から思う。パンク人生を突き通した悪童ともいえよう。


人並み外れた音楽的才能がなくても、時代を代表するロック・スターになれることを証明をしてくれたヒーローだ。


荒削りなロックスタイルだったのに、時代を巻き込む荒々しいパンク・ロック。




何て言ってるから解んネェけど、でも凄ェ格好良いんだよ。





——そして、目の前に立っている少女のお陰でそれが緩やかな流れに聞こえた。

俺は咄嗟にイヤホンを外して、"蛇の子"に駆け寄った。ま、まさか…あの女に追い出されたのか?!



走り出すと鈴の音がチリンチリンと耳に何故か響くのだ。




「…リュウセイ、おはようございます」

「お、おぉ…。ど、どうしたんだよ…」


やっぱり人間の姿になると、日本美人だな…。腰まで伸びた漆黒の髪がやけに艶かしい…。


まだまだ少女の姿なのにな…。そして、何やら腕に抱えておりこちらを見上げているのだ。




「…これ、リュウセイに上げる」

渡された紙袋には、お弁当箱が入っていたのだ。

「…リュウセイに恩返しがしたかったけど、……お料理作ることしか出来なかったから」


物静かなそうな瞳が申し訳なさそうに見上げて来る。思わず口端を上げ、俺は"蛇の子"の髪を撫でて上げたのだ。

サラサラの髪が心地よくて、それから目線を合わせるようにしゃがんだ。


「お前、名前は?」



もう一度、昨日の公園みたいに聞いてみた。



そしたら、小さく首を振られた。物凄く不謹慎だが、俺は笑ってしまったんだ。


 
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