魑魅魍魎の菊



正影のB組は黒のクラスTシャツで——正影には全くと言って似合わないファンシーなデザインだった。

龍星はC組で水色のTシャツでこちらもファンシーなうさぎさんのイラスト。今や同姓(?)している蛇の物の怪「美鈴」に好評だったので悪態所か満更でもない様子……。



「で、玖珂は何に出るんだ?」

「——俺ァ、ドッヂボールと助っ人のバスケ…」


全くこの俺が何でも出来るからって、この仕打ちは何なんだよ。しかも暑いのは別に慣れているが、こうも湿度が高いと頭が爆発する…


「…萩原、お前は?」

「…奇遇だな。俺も玖珂と全く一緒の状況だ」


龍星の高い身長とガタイの良い体格はどのスポーツでも武器になると言って、正影と似たような状況になったのだ。



「そろそろ行くか…?玖珂」

「……しゃあねぇ…。行くか、」



二人は立ち上がり昇降口から出る。そして、ドッヂボールのコース近くの木陰に入って二人同時に溜め息をつくのだ…。




「…暑い、死ぬ。なぁ玖珂…お前の所には雪女とか居ネェのかよ…」

「……居ると言えば居るが、雪の物の怪は冬にしかこっちに来ネェっつうの…」


正影は木陰の中で仰向けになるが、何ぶん風が無いから全くもって涼しくない。そして皮肉なことにTシャツが黒いから太陽の光を吸収していく…




その瞬間、水色のTシャツを着た女子の集団がこっちに来たのだ…。



「は、萩谷君!!バスケの応援、後で行くね!」

「それからドッヂボールも頑張ってね!あたし達、応援してるから!」

「おぉ…。お前等も頑張れよ」


萩谷は力無く笑えば、女子の集団は黄色い悲鳴を上げながら立ち去って行ったのだ。ていうか…一体なんだったんだ。


(ていうか微かに俺のことも聞こえたような…)


…最近よく学校に来るようになった萩谷は元は根の良いリーダー性を持ち合わせている奴なので、すぐにクラスの奴らと仲良くなった。


これもあの蛇の物の怪の子のお陰であろう…。


 
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