魑魅魍魎の菊
『ほぉ〜ら、"イノハラ"金出せってば』
『さっきの蹴り足らなかったのかな〜?』
『あの"女"が邪魔したから、命拾いしたな!!』
下品な笑いをする男達が自販機の前で気の弱そうな男子生徒を囲んでいたのだ。
龍星は指を鳴らし、正影は首をゴキゴキと鳴らすのだ。加藤といえば途中で雛のバスケの試合に行ってしまった。
その音に気がついたのか、男達は後ろを恐る恐る振り返ってしまった——
「く、玖珂正影っ…?!」
「汚ェ面と口で俺の名前を気安く呼ぶな」
——高村、少し時間が掛かるかもしんネェ。
「そこ退けよ、俺達ジュースが買いたいんで」
龍星は自分たちより幾分小さい男達をギロリと睨むのだ。
「…萩谷、龍星っ…!お、お前達組んでるのか?!」
それもそのはず。正影は学年でも眉目秀麗として有名。龍星は学年一おろか学校一の不良と言っても過言ではないのだ。
その二人が組んでいるとは——
「あ"ぁん?さっさと…
——失せろ」
微かだが霊力の混じったオーラを出した龍星は男達を威圧したのだ。そして情けなく声を上げ、尻尾を巻いて逃げて行った——。
「同い年として恥ずかしいっつうの」
正影はそう吐き捨てながら、先ほど集られていた少年に声を掛けた。