魑魅魍魎の菊
どどどど、どうしましょう…。
目の前に見えて来たのは、
——美鈴の精神を破壊しようとした"付喪神"と白髪の少年、背の高い男性だった。
(恐い恐い恐い恐い恐い、痛い痛い痛い痛い痛い——…!!)
普段表情の表れない顔が泣きそうになり、スカートの裾をぎゅっと掴んだ瞬間。
強い風が吹き荒れて、麦わら帽子が飛んでいったのだ!
「あ、あっ——……!!」
帽子を追いかけようと思うが、飛んで行った方向はあの「玖珂の物」だった。足がガクガクとして動かない…。
恐くて、足が動かない。
そして、頭に布を巻いて角を隠していたのは「スザク」であり。足下に落ちて来た麦わら帽子をふと拾い上げる。
着流しを着用しており、鏡子曰く「先ほどから奥様方の視線全てを独占してました」らしい。
「スザク様?……その帽子、」
「あの黒髪の子のじゃないんですか?」
「そうだな」
三人が近づくのだが、美鈴は動けないでいる。