魑魅魍魎の菊



「——テメェ、一体今まで何処に姿を眩ましていた」

玖珂の勢力を持って捜索をしていたのに見つからなかった。正影だけは諦めていなかったのだ。この女が滅されたはずない、と。そう易々とこの化け物が消えるはず無いと…


「私のことそんなに好き?」


菊花がそう言いのければ、余計に式神で体を縛り上げられる。同時に正影の顔も歪み「ふざけるな」と吐き捨てるだけだった。



「質問に答えろつってんだよ。テメェのその頭は飾りかよ」

「違ェーし!!人権しんがーいっ!」



正影は菊花の顎を砕こうとする勢いで掴む。瞳には最早怒りの炎しか宿っていない。


(何で——何でこんな怒りしかねぇのに、)













心が何処か磁石のように引きつけられるんだよ。


正影は瞳を伏せ、小さく息を吸ったのだった。夏の息吹がどこか息苦しいのだ。



「——何が、目的なんだ」

これを一縷の願いにかけていいのか。


「ふふっ…。玖珂君ったら、焦ってる?」


目の前の女は地味で幸が薄そうなのに、何故こんな歪んだ笑い方をするんだ。


「んな訳ねぇーだろ、」

正影が一呼吸置いた瞬間に、目の前に閃光が走ったのだった!



「「うわぁあっ!!!」」


そこには鈍い音が広がる。だが、忘れていけない——ここは階段である。


 

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