魑魅魍魎の菊



体に、魂に刻み込まれたこの感覚はどうやら——


(あの"人間の娘"——どういう存在なんだ)


黄昏時に出会った、地味な女子のことを思い出した瞬間焦りを感じた。何が神に成り下がった妖怪だというのだ?




「——お前等全員、この儂達が滅してくれよう…」




戦いの火蓋が切って落とされた。

目の前に広がるのは、未来か現か夢か。

人間の欲望と憎悪を見つめ続けたこの人生。儂はその中で一つでも愛すべき存在が出来たことを心から喜んだ。



荒らぶれた神として世を壊滅し続けた汚点を今、罪滅しとは程遠いが我が主人の為にやろうと思うのだ。

そして、帰れば——




惚れた、愛しき女の笑顔を守るために。

儂は生き抜き、戦うのだ。









(あっ!ちーちゃんったら、また私の布団の中に入って!)

(良いではないかお春。お春の体は温かいからな)




その体温が儂の心を浄化してくれる。


 
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