魑魅魍魎の菊



(どうやら助けを求めたんだな、)


自分の香りで俺から逃れたかったんだな。そう思うと…少しだけ彼女のことを不憫に思ってしまう自分がいる。





「さて、俺達も帰るか——」




いつもより騒がしかった百鬼夜行はこれで終わりを告げた。



いつぞやかまた妖怪達の戦いが繰広げられるであろう。




それは色々な思惑、戦略、感情が入り交じり何を生み出すのであろうか。それを今ひとつ理解出来ない俺達はこの世界で生きているのか。



(そう割り切ったらそこまでだな)




掌でキラリと光る時計があまりにも輝かしいものに見えたのだった。自身の血痕で汚れた時計なんざしたくないだろうな——







指先には時計の冷たさと何処か温かい自身の温かさが入り交じるのだった。




(人生はハプニングで出来てるのかな…)



  
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