第七世界
「皆木先生、生徒の争いに手を出さないでください」

海江田は当然のように言う。

「こいつを倒す事を楽しみにするのもいい。しかし、倒されては私が困る」

楓は嘆息して、海江田の腕を放した。

「何が困るんです?」

「秘密だよ。それより、教室に戻れ。みんなも戻りな」

楓の一言によって群れは崩れ、何事もなかったように教室へと移動していく。

「待ってください。まだ勝負はついてませんよ」

だが、海江田は諦めてはいない。

この局面で獲物を逃がすなど、海江田のプライドが許さなかった。

「いいから戻れ」

殺意が篭った言霊によって周囲の空気が凍てつく。

海江田は凄みのある殺気を肌で感じ、押されている。

「素直に退いた方がよさそうだねえ。では、僕はこの辺で」

海江田は教室に戻ろうと背を向ける。

しかし、数歩進んだところで、海江田は何かを思い出し振りかえった。

「その愚者に一つ伝えてくださいよ。学校内で出過ぎた真似をしないようにね」

「わかったから早く教室に戻れ。授業は始まってるんだ」

「くっくっく、では、また」

奇妙な笑いを上げて去っていく。

「ん?まだ残ってたのか」

解散した群れの場所に、佳那美が複雑な顔をして立っている。

「あの、鷹威君、大丈夫なんですか?」

「保健室のベットで寝かせて時間が経てば起きるだろ」

「良かった」

佳那美は安堵のため息をもらして、笑顔を作った。

「私は保健室に馬鹿を運んどくから、君は教室に戻りな」

「私も行かせてもらえないでしょうか?私のせいもありますし」

「君のせい?」

楓が訝しげな顔をして、佳那美の顔を見る。
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