第七世界

幼女

夢の中にいる。

過去の自分を遠くから見ている。

声を出そうにも、発声出来ない。

これは夢なんだ。

見ることしかできない夢。

小学校の時の自分。

過去の俺は一人泣いていた。

何が悲しいのかはわからなかった。

どうしようもなく泣きたかった。

でも、誰かの手が俺の頭を撫でてくれる。

手の持ち主の顔は逆光で見えない。

包み込む手の優しさに、俺は泣き止んだ。

「恭耶。いつも元気で強い子になってね・・」

子守唄のような声だった。

心が温くなり、眠気さえ覚えるようだ。

記憶は終焉を辿り、遠くなっていく。

あなたは誰なんだ?

綺麗で優しい声、懐かしい手。

それだけが脳裏に焼きついて離れない。

途端、回想は中断した。
< 14 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop