第七世界
「俺は、吸血鬼にならねえっつっただろ」

自分の顔面を殴り、立ち上がる。

「はあ、はあ」

俺は梓さんに輸血パックを返した。

「頑固な人ですね」

「昭和の人間に無理って言葉はねえんだぜ?」

しかし、体調不良は続く。

今回は、ティーナさんの力なしで立ち上がらなければならない。

そうでなければ、俺は自分の血を覚醒させるなんて無理だ。

さっきの技を出せたのは、吸血鬼の血があったからこそである。

俺は落ちている中華服を拾う。

刹那には見せる事は出来ない。

「今日は休みなさい」

「そうさせてもらうぜ」

梓さんは俺を六畳間程の部屋に通した。

特別な物があるわけでもなく、布団が敷かれている。

「後の事は私に任せて、あなたはあなたの事を考えなさい」

「分ったよ」

俺は布団の上で横になる。

血が欲しいという気持ちはない。

だが、血を取らないと不味いというのだけはわかる。

これが、下位の吸血鬼ではないという証拠か。

「頭いてえ、吐き気がするう」

他の動物の血っていうのじゃ駄目なのか。

いや、それでも飲む気はしないな。

とりあえず、何とかならないのか。

自分の血を信じるしかないのかよ。

俺は苦しい思いをしながらも、目を閉じ、朝を迎えることにした。
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