第七世界
玄魔は腕を軽く動かし、凶暴な鬼の腕へと変化させた。

亜双家に近い吸血鬼か。

「ふう、ちと面倒だな」

楓は冷静ではあるが、疲労がないわけじゃない。

一つ一つの動きの速さが尋常ではないからだ。

しかし、何も起こしていない乃亜が先に動いた。

次の瞬間、上空からメスが降り注ぐ。

「もう、楓、一人で抱えちゃ駄目だよー」

廊下を歩いてくるのは、金髪を揺らしたティーナさんだ。

その後ろには治療を施した刹那の姿もある。

「恭耶、何をのんきに池に浸かってるん?」

「俺は動けないほどきついって事が何故理解出来ない」

何度言ったところで、俺の扱いは変わらないらしい。

池から出るのにも大変だっていうのにな。

水を吸った服と共に這い上がりながら、立ち上がる。

顔を上げれば戦いは始まっている。

玄魔の強靭な腕を回避しているのは楓だ。

佳那美よりも制御しているせいか、速い。

紙一重で一つ間違えれば、ダメージは計り知れない。

乃亜の相手はティーナさんがしており、こちらも速い。

メスを手刀で弾き、お互いに攻防一体である。

動きが医者とは思えないほどだ。

「皆木さんを傷つけるつもりはないのだがね」

気づけば俺の目の前に牙狼がいる。

対応する前に顔をつかまれて、地面に叩きつけられた。
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