第七世界
もう一度手伝おうとすると、今度は拒む気配がなかった。

刹那は鼻を啜りながら、俺は刹那の様子を伺いつつ、無言で土鍋処理を行う。

「これくらいか」

額に浮かび上がった汗を拭う。

毒素が床に染み込んでしまって、何度こすっても取れなかったので放置する。

「とりあえず、明日から学校だからよ、風呂入って寝るか」

「恭耶、痛くないんか?」

そういえば、仮面の男に殴られた事を忘れていた。

足の火傷の事も思い出し、両方に痛みが走り始める。

「い、いたたたた、余計な事、言うんじゃねえよ」

「恭耶がアホなだけやろ。こんなん唾でもつけてたら、治るわ」

本気で唾を吐きかけてくるなんて、人道を踏み外してる。

「アホか!全然安らぐわけねえだろ!いてええ」

あの時は必死だったから何とかなったが、内臓のダメージは計り知れない。

「ホンマに、大丈夫なんか?」

「さっきからイテエを何回言っていると思っている。病院に電話してくれ」

これは不味い。

楓のように平気な顔して動けるわけがない。

「ちょう、待っててや!」

真剣な顔つきで、電話機のある場所に走っていった。

世間では携帯電話があるらしいけど、刹那や俺は持ってない。

別段、必要と感じたことはない。

連絡など家の電話があれば十分だ。

しかし、今は無駄な説明をしている場合じゃない。

数分後には刹那が駆け足で戻ってくる。

「すぐ来るらしいわ」

「悪いな。っつうか明日から学校だっていうのに、無駄な怪我なんか負わせやがって」

「恭耶がいきなり口の中にご飯入れてくるからやんか!」

「俺がお前の料理の不味さに気付かせてやったんだろ」

「そこは嘘でも美味しい顔するのが男の仕事やろ!」

「お前が男だったとして、アレで平気な顔を作れるのかよ?」

「ふん、無理や」

当然の話だが、威張っていう事ではない。
< 75 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop