Tactic
「へ~トーコちゃんか。何度か見かけたことあるよな?トモのこれか?」

小指を俺に掲げ、煙草を地面へと放り投げ、靴の底でこすりつけた。



「ほんじゃ、まぁ、行くとすっか」


言いながら、叶さんは単車と共に俺達に背を向ける。


「あ、トモ」


何かに気づいたかのように、叶さんはもう一度振り返る。

「あ、はい。なんすか?」

鋭い視線で、俺を見据え低い声で呟いた。


「嘘ついてたらお前……海に沈めんぞ」


とても冷たい目だった。

誰の忠告も無視して、ただ憧れだけで叶さんの傍にいた。


もう、後戻りはできないって……このとき、俺は心の底から思った。
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