Tactic
そう考えながらも、私の口からは何も言えない。

叶さんがバイクで走り去ってから、智也は険しい表情で終始無言。


何度か声をかけてみようと試みるが、智也の気迫により消されてしまう。

だけど、ちょっと勇気を出さなきゃ。



「ねぇ」


「あ?」


私の呼びかけに、智也は不機嫌そうに返事をした。

少しばかり怯みはするが、何だか不安な私は変な質問をしてしまった。



「家に帰るんだよね?」

「家に帰らねぇで、どこに帰んだよ?」


バカじゃねぇの?と罵られながらも、いつもの智也の雰囲気に戻り、内心ホッとした。


ほとんど会話もなく、ただ歩いていた。

いつの間にか、私の自宅に到着している。


少し、立ち止まる智也と私。


何か言いたいのに何も言えなくて、何か言わなくちゃと思っているのに何も言えなくて。


空気が重苦しくて、居づらい。

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