Tactic
side智也
トーコの小さな手は、俺の衣服を強く掴んでいた。
「トーコ?」
俺がそう問うと、トーコは慌ててそれを離す。
「ごめっ……私、帰るね」
「おいっ、トーコ…」
俺の話も聞かぬまま、トーコは走り去った。
なんだよ。今日のキス、してねぇじゃん。
お前に……触れられるただ一つの理由なのに。
お前に触れられるのは、キスをする時間だけなのに。
今日は、お前に触れられなかった。
いや、触れたっけ…
ほんの少しの時間、手を繋いでいた。
俺は掌を見つめる。
トーコに近づけたと思ったこの手の距離は、再び遠ざかった。
「トーコ?」
俺がそう問うと、トーコは慌ててそれを離す。
「ごめっ……私、帰るね」
「おいっ、トーコ…」
俺の話も聞かぬまま、トーコは走り去った。
なんだよ。今日のキス、してねぇじゃん。
お前に……触れられるただ一つの理由なのに。
お前に触れられるのは、キスをする時間だけなのに。
今日は、お前に触れられなかった。
いや、触れたっけ…
ほんの少しの時間、手を繋いでいた。
俺は掌を見つめる。
トーコに近づけたと思ったこの手の距離は、再び遠ざかった。