Fate
「幽霊ねえ……それくらい自分らでどうにかしろっての。大体、幽霊なんてこの世にいねえってのにさ」

「その決まった時間というのは、いつも十五時頃。歌が聞こえてくるらしいわ。それが聞こえてくるのは立ち入り禁止になってる遺跡中心部だから、作業員は手の打ちようが無し。上の者がどうにかしてくれ、と」

「歌? どんな歌だ?」

「子供たちが歌うような、楽しげな歌……って貴方、もしかして昨日私が渡したこの報告書に目を通していないの?」

 女性は怒りと呆れが混ざったような声を出した。

 青年は女性の手から報告書を取り、パラパラとページを捲る。そして、半分にやけながら言う。

「だってなあ、この報告書、タイトルが『ターリーズの亡霊』だぜ。胡散臭すぎる。こんなの、誰が信じるんだよ」

「ちょっと! 貴方そんなのでこれか」

 物凄い剣幕で喰って掛かろうとする女性を、青年が右手で制した。そして、左手でシーっと、静かにというポーズを取る。

 青年が視線を戻した先には、体格の良い男が二人、立っていた。立ち入り禁止の遺跡中心部を護る警備兵だ。
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