アタシとじいさん
「お母さんが見つかったら連絡するわね」
話を聞き終わった婦人警官は、そう言って帰っていった。
しばらくするとケンさんが入ってきた。
「お。もうネェちゃん帰ったのか」
ふふと微笑んだアタシを見て安心したのか、
「なんだ、元気じゃねぇか」と言って腰掛けた。
「トミさんは?」
「トミさんは仕事だ。今まで有給つかったことなんかなかったのに、昨日初めて使ったんだとよ」
「そうなんだ…アタシが…」
シュンとなるアタシを見て「たまには休んだ方がよかったんだよ」と慌てて言うケンさん。
ちょっと面白い。
「ケンさんは?今日は休み?」
「おう。俺も有給とった。今日と明日。
最近腰が痛かったから、ちょうどよかったんだ」
「あ~イテイテ」と言いながら腰をさするケンさん。
でもアタシは知ってる。腰が痛いのはウソってことを。
「ケンさん…」
「ん?」
「どうもありがとう」
「おう」と目をそらしたケンさん。
顔は見えなかった。
どんな顔してたのかな?