一生分の恋
しかし手が動かない。
さっきキスは、今までのおふざけの延長かも知れない…

ああ…どうしたら…

そっとマイの方を盗み見る。マイは無表情でまっすぐ前を見据えていた。
自分だけが浮かれているようで、急に恥ずかしくなって、少しシュンとした。

学校の廊下は永遠には続かない。昇降口に着いて、それぞれ背中合わせで靴を履き替える。

何か言わなきゃ。

でも、やはり言葉は現れてくれない。

マイの住む団地は、幸運にもうちとは同じ方向で、たまに一緒に下校できる時はワイワイとマンガやアニメの話で盛り上がり、時間を忘れる。

今日は二人とも無言だった。しかし、今までの、どんな帰り道よりも二人は同じ空気を感じていた。

マイが自分のものになってくれた。もちろん、自分はマイだけのもの。

愛してる。
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