いとしのかずん
「おい! あぶねえって!」

「ぶつけないわよ……」

と、口を尖らせる敦美。それでも俺が

「それ、二万するんだかんな?」

と言うと、目を丸くして

「ええ? そんなすんの? これ……」

と驚いた様子で、しげしげとラケットをながめた。

「…ラケットって、高いんだねー……」

やはり、少し近眼が入っているようだ。目の前に近づけてラケットを鑑賞している。普段でも少し寄りがちな両の目が、ますます寄り目になっていた。

「ったく……危なっかしいんだから……」

俺は、値段を聞いてラケットを慎重に扱う敦美にひとまず安心し、ベッドに腰を下ろした。
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