君に贈る詩*

たいせつなもの

「あたしってさ、あんたの何?」


いつものように教育資料室でお昼を食べていたとき、
突然絵美香が尋ねてきた。


「なんだろーね」

かなり驚いたが、俺はなんでもないフリをして箸をとめずにおかずの唐揚げを口へと運んだ。


何か、って聞かれれば好きな人なのは間違いないけど。

彼女でもない、

まして彼氏がいる絵美香にそんなこと言えるわけないじゃないか。



「だってさ、こんなところで密会してんだよ?

大斗にバレないようにまでして」


「……なに、それは俺にもうここに来るなっていうこと?

だったら、自分が来なきゃよくね?」

突き放すような言い方しか出来ない自分に嫌気がさす。


本当は、君を手に入れたいのに。


「ち、違くて……!」


「なにさ」


「……あたし、大斗と別れたの!」

彼女はそう言って、
しゅんとなり黙り込んでしまった。


「なんで、別れたの?」

期待するな、自分。


そう思いながら、彼女を見つめれば、彼女は顔を赤らめて

「好きになっちゃったから」

と小さく呟いた。


「誰を?」

「だから、礼を!

……軽いって思った?」


彼女はそう言って、
顔を隠した。



その仕草が、ひどくいとおしい。


「ねえ、顔見せてよ」


「やだ、礼の顔見たくない」

頑なに顔を見せない絵美香に俺は耳元で

「キス、出来ないじゃん」
と呟いた。


「─…っ、礼の馬鹿っ」


そう言って顔をあげた絵美香に甘いキスをした。


たいせつなもの
(とっくに気付いていたはずのそれに、今手を伸ばしてみるんだ)

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