繭(まゆ)

死んだ私と生まれた私


「じゃあ、何かあったらすぐ連絡して。絶対帰ってくるから」

そういって、玄関ドアの隙間から首だけを覗かせ、真剣な面持ち。

「忙しかったら、無理しなくていいから」


あ、まただ。

可愛くない私。


うつむいた頬を、乾いた大きな手が優しく撫でる。

「こんな日に仕事でごめん。

ちゃんと、連絡して。絶対に間に合わせるから」


門まで見送ろうとする私を軽く制止して、彼は静かに扉を閉めた。


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