昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦


───カシャ、カシャ。

───カシャ、カシャ。


太郎たちが眉毛を動かす音が、絶え間なく指揮所に響いている。


『戦艦大阪、引き続き高度800mを維持』

『笑力収集状況、問題ありません』

『兵装および格納庫のチェック、進行率60%』

『VP(パイタルパート)のダメージ調査完了。航行に支障無し』



………少しは慣れてきたとは言え、やはり悪夢的な光景だった。

遂に動き出した空中戦艦『大阪』は、真面目なくいだおれ太郎たちによって運営され、航行に問題は無い。

各部署から寄せられる情報は、逐一、太郎たちがフキダシで報告してくれる。

…………だが。

俺の頭のハテナマークはなかなか消えなかった。

(……大体、あのフキダシは何処から出てんのや………?)

…………やはり、謎の多い船である。

そして、そもそも………、


「………いや、だからね。それ程、『笑力』は難しく考えなくても良いんだよ。何というかね、その、人が生きようとする、いわゆる『ポジティブな力』を、何とか様々な用途に応用出来ないだろうか、というのが僕の開発のスタート地点でね。その為に、ここ大阪に溢れている『お笑いの持つ可能性』を模索していたんだよ。分かるかね?大阪ほど、この条件に当てはまった都市はなかなか見当たらないね。一度、アメリカのジョークという奴を研究した事もあったんだが…………いや、ヒドかったね。知ってるかね梶山君。アメリカン・ジョークという奴は………」


……………この、林のオッサンが、あまりにもウザ過ぎる!!

まるで遠慮会釈のないマシンガントークを延々と聞かされていると、

(ハナシ聞いてくれる相手が欲しかっただけで、別に芸人とか『笑力』とか、関係なかったんとちゃうんか………?)

………そんな気がしてきた。

今の俺は、さしずめ、艦長というよりかは、話し好きな年寄りに捕まったヘルパーさんといった感じ、やろか………。





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