しなやかな腕の祈り
本当に情熱の大陸だ。

ラテン系で、楽しそうで
ここが一番天国に近い所みたい。
あたしは、飲み物を買おうと思って
荷物を抱えて立ち上がった。





事故って、本当に予想外に起こる。





一人の女の人が、あたしにぶつかった。

よろけて、あたしは勢いよくこけた。




「あっ…ファルダ!!あたしのファルダ
踏まんといて!!!!」




一番大切なものが鞄から転げでた。
色褪せた、古い安物ファルダ。
あたしにとって、命の次に大切なもの。



ファルダっていうのは
フラメンコのバイラオーラの練習着。
そう、あたしもバイラオーラなのだ。



急いでファルダを拾い上げて
埃をはらった。良かった。
どこも破れたような様子はない。





「本当にここにおるんかなぁ。お母さん」





人混みから外れて、ビールを片手に
あたしは1人呟いた。
何だかどんなに頑張っても
捜し人には会えないような気がしてきた。
漠然としすぎている。
フラメンコの盛んな所へ行けば
絶対に会えるとか秀一叔父さんは言ったけど。
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