しなやかな腕の祈り
秀一叔父さんの知り合いから譲ってもらったって聞いたけど、本当はお母さんのだったんだ…そう思ったら嬉しくなった。
「何食べにいこうか」
懐かしそうにひとしきりファルダを撫でてから、何かを切り替えたかのようにお母さんは話題を変えた。
その日、お母さんと2人で隣町の日本食屋へ夕飯を食べに行った。慣れた手つきでハンドルを回して車を運転するお母さんの横顔は、何だか妙に哀愁漂ってて不思議だった。
「大将!!!」
お母さんと入っていった料亭の大将は、無口で無愛想な日本人だった。
「ここの刺身が美味いんやで…多嘉穂、食べてみな!!それに遠慮したらアカン。食べたいもの何でも食べな」
相変わらず、あたしはお母さんの話をひたすら聞いているだけだ。
「多嘉穂…って…呼ばれると何か恥ずかしいな」
あたしがそう言うと、お母さんは高らかに笑い声を上げて、そして
「あたしも恥ずかしいよ」
と言った。次の瞬間、笑い声を上げていたのはお母さんだけじゃなくて、あたしもだった。変なの。母子なのに。名前を呼ぶのが恥ずかしいとか、呼ばれるのが恥ずかしいとか。
「何食べにいこうか」
懐かしそうにひとしきりファルダを撫でてから、何かを切り替えたかのようにお母さんは話題を変えた。
その日、お母さんと2人で隣町の日本食屋へ夕飯を食べに行った。慣れた手つきでハンドルを回して車を運転するお母さんの横顔は、何だか妙に哀愁漂ってて不思議だった。
「大将!!!」
お母さんと入っていった料亭の大将は、無口で無愛想な日本人だった。
「ここの刺身が美味いんやで…多嘉穂、食べてみな!!それに遠慮したらアカン。食べたいもの何でも食べな」
相変わらず、あたしはお母さんの話をひたすら聞いているだけだ。
「多嘉穂…って…呼ばれると何か恥ずかしいな」
あたしがそう言うと、お母さんは高らかに笑い声を上げて、そして
「あたしも恥ずかしいよ」
と言った。次の瞬間、笑い声を上げていたのはお母さんだけじゃなくて、あたしもだった。変なの。母子なのに。名前を呼ぶのが恥ずかしいとか、呼ばれるのが恥ずかしいとか。